魔法の杖を持った男 ー チェコ・プラハ

彼と出会ったのは、プラハの中では中堅くらいに位置する安いドミトリーだった。そのドミトリーはログハウス調のまるで小人の家のような可愛らしい雰囲気で、それが原因なのか、泊まる人々の心をいとも簡単にやんわりとゆるめてしまう不思議な力があった。 わたしもその力に引っ張られてか、滞在を2日、3日、5日、10日とずるずる延ばしてしまい気がつけば共有キ

わたしの言葉に、人の何かを変える力なんてないけれど【日本・1ヶ月目】

「大丈夫だって。誰も何にも思わないって」「大事なのはまず、やってみることでしょう?じゃなきゃ、状況は変わらないよ」 イラストレーターになりたい、だけれど恥ずかしくて自分の絵を見せることができない。そうポツリと呟いた女の子に投げた言葉がブーメランのようにわたしに刺さる。 「自分のいいところばっか見せようとしたってさ、そんなの他人は何とも

今こうしてここにいるのは、あなたが「おかえり」と言ったから【日本・1ヶ月目】

「もう旅にはいかないの?」何度も何度も繰り返し問われた言葉だ。その度にうーんと、言葉を濁してきた。 その土地に暮らすようにとどまる、生活と旅の境界線が曖昧になるくらいの旅が好きだ。非日常だったことが日常になる感覚が好きだ。食べたことのないご飯に挑戦する瞬間も、ゾワッと全身を包む異国の匂いも全部好きだ。 この気持ちを言葉にして伝えたいの

気持ちを切り売りする事と引き換えに、心を失ってしまうくらいなら【日本・1ヶ月目】

夏の夜のお祭りのように「会おう、会おう」賑やかだったスマートフォンも静けさを取り戻し、ちいさな波のようだった日常はゆったりと静かに、おさまりつつある。 日本に帰国して、ひと月が経過した。 「やっぱり日本はホッとしますか?」という質問に首を傾げてしまうくらいに、180日間という期間は、28年間過ごした日本の感覚を忘れてしまうには、あまりにも短

本当のわたしは旅になんて出たくなかった【スペインから日本へ】

今これを、スペインからロシアに向かう飛行機の中で書いています。ロシアまで約7時間。そこからさらに10時間ほどのフライトで、数時間後にはあっという間にもう日本。何だか遠くまで来てしまったような、そんな途方もない気持ちでいたけれどGooglemapで自分の旅をたどってみれば、こんな小さなPCの画面にすら収まってしまう。そう思うと、世界は案外とっても近いも

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