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ようこそ夢のようなおとぎの国その1【チェコ・プラハ】

by 古性 のち

ドイツ・フランクフルトで2人に別れを告げてわたしが次に向かったのは、「おとぎの国」で知られている、チェコだった。
フランクフルトから飛行機で2時間。10人もスタッフがいるのに1人しか稼働していないカウンターでじりじり時を焦がしながら、「これ、許されるってすごいなあ」とぼんやり思いながら、奥で動画を見ながら笑っているスタッフをながめていた。

後ろを振り返ってみると、誰も気にする様子がない。
わたしが気が短すぎるのだろうか、それともこの人たちの気が長すぎるのだろうか。

やっと私の順番が回ってきた頃には後ろにだいぶ列が伸びていて、さらにゲートクローズまでは40分ほどに迫っていた。

「旅行?」とけだるそうに聞かれたので「YES」と答えると、ペタッとぶっきらぼうにシールを貼ってくれた。

前日あまり眠っていなかったわたしは(というか、眠れなかった)乗り込んですぐに眠ってしまい、気がつくとすでにチェコの空港に到着していた。

コロッと丸い看板に大きな文字がずらりと並んでいるチェコの空港は、まるで大きなおもちゃ箱を広げたようでとっても可愛らしくて、なんだかホッとする。

途端「あ、わたしこの国好きだなあ」とよく分からない確信がこみ上げてくる。
まだ町にすら出ていないくせに、滞在日数を指折り数えながら、なぜかこの時すでにこの国の滞在を伸ばそうと決意していた。

なぜだろう。今もよく分からない。
だけれどチェコには何か「そういう」力があったのかもしれない。

「このチケットは高いから、あなたはこれで行きなさい」

宿までの行き方がわからずにインフォメーションに足を運ぶと、メガネをかけたおばちゃんが、ジェスチャーと少しの英語を交えながら絵を描いて教えてくれた。

ありがとう、と挨拶すると、「そっちじゃない。こっちから」と、慌てて乗り出す。
方向転換をしてもう1度お礼を言うと、目があった少し年老いた夫婦が「メトロ」と2人で指差してくれた。

冬のチェコは閑散期で、観光客が少ない。
と、ギュウギュウのメトロに乗るまでは勝手に思っていた。

そういえば今はクリスマスシーズンで、チェコの市内では大々的にクリスマスマーケットが開催されているはずだ。
駅名をメモした紙と聴きなれないチェコ語の発音に耳を済ませながら、人々の隙間からチラチラと見えるクリスマスカラーの街並みに、ちょっとばかりワクワクする。

結局今夜泊まるホテル「アローン」(名前がすごい)降り立った駅からはケータイがないので。
唯一の地図頼りに「このホテルはどこですか?」と、何人にも尋ねけれど、それでも方向音痴なわたしは迷ってしまう。

来た道を行ったりきたりしながらズンズンと食い込むバックパックの重みが、徹夜明けの体にはきびしい。
耐えかねてバックを下ろし「もう」と、ひとりごとを地面に投げかける。

こんなにケータイに依存しなくては、わたしは満足に自分の宿すら見つけられないのか。
その事実になんだか悲しさがこみ上げてきて、動くのすら、億劫になってしまう。

それでもひとり旅は「自分でなんとかする」以外、「勝手になんとも」なることは、まずない。
どうしましたか?なんて向こうから聞いてくれるラッキーが落ちているわけもなく、再び重い荷物を背負い直した。

バックパックが13kg、前に持っているバックが8kgで計21kg。約子供ひとり分。一体何をいれたらこうなってしまうんだろう。

2時間探し続けたあげくようやくたどり着いたその場所は、普段なら「可愛い!」と感嘆をあげてはしゃいでしまうくらいに素敵で、すぐにでもカメラを構えたかったのだけれど、もうわたしの体力は限界で。

すぐさまベッドに倒れんだ途端に急激な眠気がわたしを包む。
そのままいつ眠ったのか記憶はなく、気づくと窓の向こうは真っ黒に塗りつぶされていた。


古性 のち
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