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ねえ、もっと緩めばいいのに。- 歌と踊りの国が教えてくれたこと 【フィリピン セブ島】

by 古性 のち

「ねえ。何でいつも大変そうなの?どうしてそんなに働くの?」
問題集を解くわたしに、となりでケータイをポチポチいじるフィリピン人のAnaが聴いてきた。

過去形と現在過去進行形が頭の中でうまい具合にマーブルになっている。
なんで過去なのに進行してるのかわけがわからず、頭がいたくなってくる。

「仕事と勉強ばっかりしてないで、もっと外にいかなくちゃ」

フィリピン人は、とにかくそこぬけに明るい。

町中には音楽があふれていて、ところかまわずみんな歌いだす。誰かが歌うとまた誰かがつられて歌う。
ウェイターが踊りながら料理を運んでくることもあるし、さっきまで何もなかったところにライブ会場ができあがっていたりする。何かおきても基本は笑って「It's ok(いいよ!)」だし、
店内で誰かのバースデーがあれば、関係ないひとも大きな声で祝う。そして手をとって踊りだす。

”なんだかディズニーミュージカル”みたいだなぁと、ぼんやり思ったのを覚えている。

「給料日は外にでない方が、懸命だよ」
その意味を本当に理解したのは、初めてのHFD(ハッピーフライデー)だった。
道路にあふれる車、車、車!街には笑顔の人たちが行き交い、タクシーは2時間待ってもこない。挙げ句の果てには空には花火が上がっている。

週末と給料日が重なるこの日。にわかには信じがたいが、ATMからはいっさいがさいのお金が消える。

今日を全力で楽しみ、生きる。だからなのかフィリピン人には、驚くほどに”貯金をする人"が少ない。
良くも悪くも、本当に「It's OK」であり、そこぬけに明るいのだ。

Anaがけだるそうに話しかけてくる。

「フィリピンにきたんだからさ、フィリピンのルールで過ごしてみなよ。きっともっとハッピーになれるんだから」

なんだかそんな無責任な言葉がいやにおかしくって、思わず笑ったら同時にふと肩の力が抜けた。

そうだった。ここは日本じゃないんだった。
外から聴こえるけたたましい歓声と音楽。
今日も何かの記念日を誰かが祝ってる。でももしかしたら、なんの記念日でもないかもしれない。

Anaとふたりで顔を見合わせて、ゆるやかに笑う。

今週末はすこし無理してでも、海まで行ってみよう。

もちろん、仕事道具はぜんぶ置き去りにして。



古性 のち
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