LOG IN

わたしが旅にでる理由

by 古性 のち

「世界一周にいきます」と宣言してから、日本でも1カ国目のフィリピンでも、「なんで行くの?」とたくさんの人に聞かれる。それはそうだ。わたしが逆立場でもそう聞くし、実際いろんな人に聞いてきた。

だけれど何度探したって、明確な理由なんて見つからない。くるりがゆるゆる唄うハイウェイのように、今宵の月がわたしを誘っているからかもしれないし、そろそろ車の免許を取ってみてもいいかななんて、思っているからなのかもしれない。違う国に住んでみたいのかもしれないし、見たこともない風景に出会って、誰かに自慢したいだけなのかもしれない。

つまりはちゃんとした理由なんて、何にもないのだ。

"世界一周をすること" を決意したあの日から呼吸をするようにずっと隣にいたこの気持ちは、夜が明けたら朝がくるように、もう何があっても変えられない決定事項なんだ。

わたしは何処にいても、「ここではないどこか」に行きたがっていた。一箇所にずっと留まり続けることが苦痛で苦手で、何より不安だった。
そんなことを話すと、「厨二病かよ!」って友達は笑ったけど、だって本当にそうで。

毎日同じ景色しか見えない席にも
飼育されているように狭い箱の中をウロウロするだけの自分も
機械のように同じ時間に鳴る時計も
楽しいはずなのに、心がざわざわしてしまうあの感覚も
なんだか全てがとにかく怖くて不安だったんだ。

そんな思いに蓋ができるのが大人だというのなら、わたしは永遠に大人になんかならなくていい。
本気で、そう思う。

最初の1カ国目、フィリピン。
新品のバックパックにありったけの荷物を詰めて背負ったときに、わたしは涙が出そうになった。

ずっしりと背中にかかる7kgの重さが、これからわたしのパートナーで
不安がってたわたしに「一緒にいこう」と力を貸してくれる仲間なのだ。

同時にこのまま張り裂けるんじゃないかと思うくらいドキドキ高鳴る胸が、教えてくれた。
素直に自分が感じる方に足を伸ばせばいい。
誰になんて言われてもいい。自分を信じればいい。

そう。わたしが旅にでる理由なんて、本当はなにひとつない。
この、ドキドキする気持ちひとつで、十分なんだ。



古性 のち
OTHER SNAPS