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旅、再スタート【世界一周】

by 古性 のち

朝5時。最寄駅から羽田空港に向かうバスを待つ。
残念ながら天気は曇りときどき雨。まだ明けきっていない鉛色の空からポツポツと、細かい雨がピンクのバックパックをわずかに濡らしてきた。

8月19日。フィリピンから日本に戻ってきて、すでに3週間近くが経過していた。
戻ってきたときはすごくホッとしてゆるっと体を伸ばしていたけれど、”心地よい”は決して今、私が求めていたものではないことを、ずっしりと重いバックパックが、教えてくれる。

羽田空港に向かうバスの中、ぼーっとする私の頭の中をたくさんの感情が通り過ぎていく。

日本に残してきた大好きな猫のこと
会おうね、と約束したきり会えなかったともだちのこと
最後まで心配そうに見送ってくれた家族のこと
そして何より「7ヶ月も多分、待てないからね」と困って笑っていた、だいすきなあの人のこと。

グルグルいろんな考えが浮かんでは、シャボン玉のように消えていく。
でもどれも正しい答えなんかない。私にできることは、今目の前にあるこの気持ちに、きっと正直に生きるしかないんだろう。

空港に降り立った瞬間、それまでいろんな感情でもやもやしていた頭がすっと軽くなるのを感じた。

”あ。わたしここから、また旅にでるんだ。”
本当にそんなシンプルな、当たり前の感情を、空港が呼び戻してくれた。

家族だって、猫だって、友人だって、あの人だって。もちろんとっても心配。
だけれどわたし、これから7ヶ月間かけて、大事な夢を叶えにいくんだった。

途端に心の中からフツフツと、心配を全部押し返してしまうほどのワクワクが溢れ上がってくる。

「いってらっしゃいませ。しっかり楽しんで!」
世界一周に行くんです、と言ったわたしに、カウンターのお姉さんが声をかけてくれた。

心配ごとも、会いたい人ももちろんたくさん。でも今私がほしいものは
”心地良い”じゃない。”ワクワクする気持ち”なんだ。


1カ国目、向かうはタイのバンコク。そこから列車に乗ってマレーシアへ向かう。そこからベトナムに抜けて、ラオスに行って・・・。

胸がドキドキ高鳴り出す。何度も心が繰り返す。
そうだ。わたし、これから夢を叶えにいくんだ。

クンッと背筋を伸ばして、バックパックを背負い直す。
心の中でちいさく日本にさよならを告げて、出発ゲートをくぐる。

旅が、ここからまた再スタートを切った。



古性 のち
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