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約180日間にわたる「旅することばと写真展」がおわって、ただただ純粋にいまおもうことを綴る

by 古性 のち

「わたしがこの半年間つくりたかったのは、旅に出るまえずっと不貞腐れていた、
わたし自身にあげたい場所だったんだ」

ずっとはなればなれだった頭と心が、
なんだかひとつの線で結ばれたような気持ちになったのは、
すこしうす暗い会場を、門上徹さんのやさしい歌がまるくまるく、
つつみ込んで溶けていく、東京での写真展のフィナーレのときだった。

はじめましてのひとも、
何度目ましてのひとも、
これまでがんばってきた仲間も、
みんなゆったり、体を揺らしながら笑っている。

ああ、この空間をプレゼントしてあげたい。
だれにでもない、隅っこでずっと苦しんでた、過去のわたしに。 
 

2017年12月2日。口をはっとすこしだけ開いてみると、薄くにごった、白いけむりが空にあがった。
暑くて暑くて、袖を限界までうでまくりをしたのは、もう5ヶ月もまえのこと。

全国をまわる巡回展「旅することばと写真展」は、この日東京でフィナーレをむかえた。

「旅の途中で、こころにうまれた透明感をつたえたい」
「写真を展示するだけではなくて、その場に必ずわたしがいたい」
「くつろぐ空間がほしい。すぐに帰ってしまうひとを減らしたい」

だんだん、装飾チームのみんなの眉間にシワが寄っていく。
「透明感ってどういうこと? なんで、くつろぐ空間が欲しいの? マスト要件なの?」
海辺で。宿で。どこかのカフェで。
何度目かの”装飾会議”は、いつもだいたい堂々めぐりになる。

 
 
「写真展をやりたい」と言い出したのはわたしで、
同時に「写真展をやりたくない」と言い出したのもわたしだった。 

 

なぜだか、頑なに、ふつうに写真を飾るような展示をしたくなかった。
ただ、それがなぜなのか、どうすればできるのか、わたしの中でも消化不良をおこしていたから
やれ透明感だの、くつろぐスペースだの、写真を壁に貼りたくないだの言っては、みんなをこまらせた。

わたしが、ぐちゃぐちゃな感情とは長年の大親友で、今よりももっともっと、不貞腐れていたころ。

四角 大輔さん。高橋 歩さん。本田 直之さん。

「ちゃんとした大人になりなさい」だなんて、後ろ指を差してくる世間からするりと抜け出して、自由奔放に生きている彼らがうらやましくて、うらやましくて、言ってしまえばあこがれを通りこしてただただ妬ましかった。
何度も何度も本を読んでは、それはもう奥歯を食いしばってよく泣いた。

だって、かれらと自分のあいだには、決定的な大きな溝がある気がしたから。
その溝を埋めるすべを、知らなすぎたから。

そんな不貞腐れたわたしがいそいそ足を運んだのが、
世界一周を終えた方の写真展だったり、セミナーで。
とにかく1ミリでも良いから、何かかれらに近付くためのヒントがほしかった。 
  

だけれど、キラキラしたかれらは、わたしには、どうあがいても真似できないほどにまぶしすぎて。
想像もできないような旅のはなしを聞いたり、写真をみては、ワクワクしながら、泣いていた。

あれから十何年がすぎて、わたしはいま、あのときのわたしが涙を流しながら羨んでいた立場に、
ほんのすこしだけ、近いところに立っている。

ぽっと、スマホのライトで照らすようなか細い光が、
あのころ、右も左も暗闇だった道に、いまは差している。

だからこそわかるのは、わたしが恋い焦がれたかれらは、決して特別な人間なんかじゃない。
自分とおなじ、いっぱい悩んで、いっぱい苦しんで、いっぱいもがいてきた人間なんだ。 
 

そんな当たりまえな、簡単なことに気づくのに、わたしは何年もかかってしまったけれど。
もし、同じようにもがいている人がいるなら、せめて少しだけ、手を伸ばしてみたい。

手を伸ばせる距離は限られているけれど、だからこそ。 
 

「こころにうまれた透明感をつたえたい」
と思ったのは、綺麗な景色をみるだけではなくて、旅に出る前、ほんとうに不安だった思いも丸ごと知ってほしかったから。 

 
「写真を展示するだけではなくて、その場にかならず、わたしがいたい」
と思ったのは、なぜここにきてくれたのか、わたしにできることは何かないのか、全員と直接お話がしたかったから。

 
「くつろぐ空間がほしい。すぐにぱっと帰ってしまうひとを減らしたい」
と思ったのは、もしひとりで何か抱えているひとがいるならば、味方になってくれるひとを見つけてほしかったから。

 
 
そんな風にちゃんと言語化できたのは、
長野・京都・岡山・福岡・沖縄の5都市がおわった、さいごのさいごの、東京展示だった。 
 

 
 
写真だけでも成り立たない。 
ことばだけでも成り立たない。
 
きてくれたひとたちが、その空間にいてくれることで完成する場所。  
だいじな仲間たちがありったけの時間と思いをこめてつくってくれた大切な場所。 
 

とあるひとは、空間の中で旅をして。
とあるひとは、先ほどまで、知らなかった相手とほがらかに、おしゃべりに花が咲く。

 

てててっと、展示中常駐していたわたしのそばに寄ってきては、
「旅のそうだん、しても良いですか?」
と、昔のわたしかもしれない誰かが、声をかけてくれる。 

東京での展示会場はまさにわたしが、ずっとずっとほしくて、恋い焦がれた場所だった。 
 

気持ちよく、晴れやかな気持ちで、旅を通して触れたことを浮かべながら。たくさんの顔を浮かべながら。
あの日もひとつの旅のような時間でした。
いろんな人に会えて繋がれて、嬉しかったなぁ。またお会いしたい人たちばかりです。
みなさんも遠くの旅も日常の旅も、どうかどうか楽しんで。不安や悩みもスパイスに。
今日もよう晴れるみたいです。
http://toru0430.exblog.jp/

 
ぽつり、ぽつり、こころに何か暖かいものがしみてたまっていく。

会場にひびく、門上 徹さんの歌声をききながら、なんだか走馬灯のように、
これまでのことが頭をすぎていく。

 

これは、ことばにしなければ、誰にも見つけられず死んでしまっていたわたしの歴史。
これは、ことばにしたから、この世に生まれた新しいわたしの歴史。 
  

 

理想をもとめて走り続けた180日間。
わたしはだれかのなかに、何か残せたんだろうか。

 
 
あのころ私がだれかにしてもらいたかったように、だれかの背中を押すことは、できたんだろうか。

 
 
それは、わからないけれど。

 
 
だれかひとりにでも多く、なにかあたたかいものが、伝わっていますように。
きっとそれだけで、過去のわたしもいまのわたしも、最高に、満足なのでしょう。

いや、なんかもう。なんでもいいか。うん。なんでもいいな。
だって、わたしいま、すごくすごく心地良い。

 
 
長いようで短い、写真とことばと走り回る生活が、
そっと、目を閉じた。 
 

  
この写真展をつくりあげてくれたなかまたち

作品写真撮影 - 古性のち
写真レタッチ - BrightLogg,inc
ことば - 古性のち
ことば編集 - BrightLogg,inc
空間装飾 - てるや しおり / BrightLogg,inc / おとぎ舎
映像制作 - Hitomi Ouchi / りゅーせい≠モンパチ
当日撮影 - Chihiro Taniguchi / Hiroyuki Otaki
音楽 - maishinta
広報 - Takehiro Nagi / Yoshiko Suzuki
飲食・カフェ - TiNiES
協力 - 各地移住計画のみなさま / フィリピン・セブ島の語学学校TARGET
スポンサー - KDDIウェブコミュニケーションズ様(g.o.a.t)
サポート - Tomomi Imai / Tokuma Muramatsu / EP / 梯 愛依子 / つるたま / Kaoru Okada / 
Natsumi Yumura / 鈴木しの / Hanako Kinoshita / Nasu / Sizuka Mizuno 

  

 
 
さいごに

ありったけの想いを詰めて、じつは、写真展で展示した写真やことばを詰めた、オリジナルのzineをつくりました。
特別キラキラした内容ではないかもしれないけれど、わたしの感じた旅のリアルが詰
まっています。生まれてはじめてつくったzine。
全26Pの1200円(税込)です。 
旅に出たひとには、すこしだけ旅の匂いを。
これから出ようとしているひとには、なにか背中をとんっと押せるようなエピソードを。
詰め込んでいます。

タイトル: 呼吸をするように旅をしていた
ページ: 全26ページ
大きさ: 横24cmx縦15cm
内容: 世界各国を旅ながらつづったことばと写真たち(ブログ「呼吸をするように旅をしていた」から抜粋)
※送料はこちら側で負担します

いくつか在庫がありますので、もし良ければつれていってください。
ご注文はこちらのサイトから。 
→  旅するおもちゃ箱 


 
 
さいごのさいごに

これまでまわった全国での展示も添えておきます。
現地で出会ってくださった方々、わざわざ足を運んでくださった方々。
またきっと、会いましょう。ほんとうにほんとうに、貴重な時間をつかってくださり、
ありがとうございました。そしてこれからも、どうぞよろしくお願いします。 
 

 2017年7月22日・23日:長野県(OPEN) 

 
 

 2017年8月19日・20日:京都(ABS

 

2017年9月16日・17日:岡山県(STAND

 
 

2016年10月 14日・15日:福岡県(HOOD天神


2016年11月11日・12日:沖縄県(Okinawa Dialog

 
 
* 拡散してくれた全国のみなさんも、ほんとうにほんとうに、ありがとうございました。 
うれしすぎました。

本当にほんとうに、ありがとうございました。
 
これからも、ひとりでも多くのひとの生活に、心に。よい旅を。 
 
また、どこかで。 
 
 


古性 のち
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