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#58 心地よい街にさよならを告げ 【カトマンズからポカラへ】

by 古性 のち

旅が長くなればなるほど、次第に服が解けていく感じがたまらなく好きだ。

腰の所にあるリボン結びをきちっと整えて履いていたスカートは、ある日を堺にゆるっとした、赤と青の花柄を纏った派手な柄のパンツに変わる。

お気に入りのニューバランスはノーブランドの突っかけサンダルに、首まできゅっとお利口にしまっていたシャツは、だるだるのタンクトップに変わる。

「だらしなくなる」とはどこか違っていて、それは心の何かがゆっくり解けていくのと一緒に、呼吸をするようにおこる現象だった。

こぢんまりとしたラップサンド屋さんを左に折れた所の、2Fに位置するカフェ。

すっかり常連となったこのカフェのソファで、ネパールミルクティを飲みながらこの先の旅の計画を立てる。

全く甘さを感じないこのお茶に、ドバドバと砂糖を躊躇なく投入することにも、すっかり慣れてしまった。

「ポカラ、名前の響きが可愛いよね」

カトマンズからポカラへの移動を決めたのは、割とそんな、些細な会話がはじまりだった。

賑やかな色とりどりの世界と、砂埃が舞うカトマンズに少し飽きてきた頃。

小耳に挟んだこの土地は、どうやらカフェやちんまりした雑貨屋さんが多く、この地が気に入って沈没するひとも多いらしい。

「多分、ポカラ好きだと思うんですよね。早めに移動してもいいかもしれない」

彼が隣でカタカタ叩くPCから目を逸らさずに答える。カップの中のホットチョコレートは、早々と空になっていた。

わたしは大量の砂糖で舌がだれるほどに甘くなったネパールミルクティをぐいと煽ると、じゃあ明日ポカラに移動しようか、と提案した。

「朝6時にあさごはんを食べてから、バス停まで送るから」
そう言い残して昨夜、親指をぐっとこちらに立て去っていったネパール人は、6時20分を過ぎても一向に現れない。

わたしは眠い目をこすりながら、ゲストハウスの隅っこの席で、おやつに大量に購入したクッキーをかじる。

ちゅんちゅんと、足元をスズメ達が楽しげに横切り、何かおこぼれはないかとこちらに寄ってくる。

6時35分頃になり、ようやく現れたネパール人が、ティー?コーヒー?といつもの調子で話しかけてくる。

朝ごはんを待って冷え切った体を、熱々のネパールミルクティがお腹の中をぽこぽこと温めた。

一通り満腹になったわたし達は大量の荷物を背負いこみ、5日間程お世話になったゲストハウスにさよならを告げる。

念願の朝日が差し込むお部屋には泊まれなかったけれど、親切なスタッフと便利な立地にあったこの場所へは、またいつか遊びにきたい。


ゲストハウスから徒歩5分程で到着したバス停には既に大きな白いバスが停まっていて、中からはさまざまな言語が、賑やかに外へと漏れ出していた。


古性 のち
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