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#60 交差した視線は、とろけるような少女の笑顔に吸い込まれていった。【カンボジア・シェムリアップ】

by 古性 のち

「支援活動」

気になるけれど、直視できない。何だかくすぐったいその存在は、10年前、わたしが世界一周を決意したくらいの頃から目の前をちらちら、横切っていた。 

そのキッカケがなんだったのかは、思い出せない。だけれど、やれフェアトレードだとか、やれ青年協力隊だとか、そういう”類”の資料を集めては、机の隅っこに重ねていた。 

 

自分のことさえ満足にできない自分が、人の支援をするなんて。   

多分、そんな気持ちがあったのだ。

わたしも、29歳になって。 

遠い夢だと思っていた旅をしながら生きる人生に、そっと触れることができるようになったとき。 

見守ってくれているひとが「あなたの文章に救われた」と言葉をくれたとき。 

 

本当にそんな、些細な、だけれど大きな出来事たちを”勇気”という餌にして、「支援活動」というものがそっと頭を持ち上げ、決して平たくはない私の道を、ひょいと横切ったのだ。 

 

一瞬躊躇ったせいか、私の右手が掴んだのは、通り過ぎる寸前の尻尾部分。 

正面切って目は合わせられなかったものの、確かに掴んだその手を頼りに、わたしは今回カンボジアにやってきた。

 

現地についた瞬間。迎えてくれたのは、ありったけの笑顔と、ぎゅっと力一杯に握る、ちいさな手。 

車の中に手を伸ばし、わたしの右手にはたちまち沢山の指が絡まった。 

名前も知らない、今あったばかりの少女が、わたしの頰にそっとキスをする。 

 

あんなに、尻尾を掴むのにも何年も躊躇った自分が滑稽なほどに、あどけない少女の笑顔は、心にストンと落ちてきた。 

 

ああ。 

自分の自信がどうだとか、正しい形はなんなのだろうとか。 

そんな、すかした事を考える暇があったら、さっさと足を運んでしまえばよかったのだ。 

 

ただこの子達の、差し出す手を、ぎゅっと握ってみればよかったのだ。

俯くわたしを、正面から少女の目がとらえる。ちらりと交差した視線は、とろけるような少女の笑顔に吸い込まれていった。 

 

彼女のまっすぐな黒い瞳は、一体何を夢見るのだろう。 

わたしのこのちいさな手は、何を与えることができるのだろう。 

 

頭で考えれば考えるほど、答えは見つからない。そもそも答えなんて、ないのかもしれない。 

自分の心に、素直に、従えば良いのだ。いつだって、そうしてきたように。  

 

ぎゅっとわたしは彼女の手を、握り返した。

 

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